JOURNAL | Vol. 21
先日移転オープンした札幌のカフェ「TRAIL HUT」の空間ディレクションを担当しました。
詳細はWORKをご覧ください。
TRAIL HUT ②
レイアウトと空間の骨格
前回作成した図面をもとに、客席やカウンター、厨房との距離感や動線を少しずつ整理していきました。
移転前のバスセンターの店舗もそうでしたが、築年数のある空間では、解体してみなければ分からないことが多くあります。
図面が残っていなかったり、予定していた施工方法が変更になったりすることも珍しくありません。
厨房内の動線は、日々お店に立つ店主の意見を中心に組み立て、それに合わせて構造や意匠を検討しました。
一方で、客席や入口まわり、全体のレイアウトについては、こちらから提案を行いながら空間全体のバランスを整えていきました。
プレオープンの前々日。
一気に仕上げに入りました。
空間に求めたこと
今回、レイアウトを考える上で大切にしていた条件はいくつかありました。
・エントランスの両サイドには視線を和らげるパーテーションを設けること
・採光の少ない半地下でも、できるだけ明るく感じられる空間にすること
・展示やイベントなどにも柔軟に対応できること
・以前よりコンパクトになった厨房でも、効率よく動ける動線を確保すること
これらを満たしながら、「TRAIL HUTらしい居心地」をどうつくるかを考えていきました。
半地下という個性
物件探しをしていたのは冬に入りかけた頃で、厳しい環境を体感できたことはこの場所を判断する上では良かったと思っています。
初めて訪れた時の印象は、正直なところ不安の方が大きくありました。
寒さや湿気、限られた採光、道路から一段下がった入口。
お店としてどのように見えるのか、居心地の良い場所になるのか。気になる点はいくつもありました。
ですが現場を見ていくうちに、半地下だからこそ生まれる落ち着きや、既存の構造を生かせる可能性が少しずつ見えてきました。
条件を変えるのではなく、その条件をどう魅力へ変えられるか。
その視点で考え始めたことで、この空間の方向性が少しずつ定まっていきました。
シュリタも作業に付き合ってくれた。
実際の工事は、店主ご夫妻とその仲間の皆さんが中心となって進められました。
私はレイアウトやマテリアル、家具、照明、サインなどの方向性を整理し、その都度現場と相談しながら調整していく役割です。
通常であれば施工会社とのやり取りを中心に進めますが、今回は要所要所で判断しながらつくり上げていく場面が多くありました。
強めなタイルを使うと決めていた。
窯変によりバラつきのある模様が白とコンクリートのカウンターとマッチしている。
TRAIL HUTのオープン記念にプレゼントにしていただくのはどうかな?と思い、確保しておいた2026CALENDAR。
2026年が6ヶ月過ぎての配布となりしましたが喜んでいただけたようです。よかった。
既存の木製の棚も活用。
通常はオリジナルのプロダクトやセレクト品を並べ、イベントの際は都度什器をプラスしたりしながら展開できそう。
エントランス・サイン・テーブルの造作は S.c.B に依頼しました。
新しいものを加えることよりも、この建物がもともと持っていた魅力をどう生かすか。
コンクリートや既存の構造、限られた条件も含め、この場所だからこそ生まれる空間を目指しました。
完成する頃には、最初に感じていた不安はこの場所ならではの個性へと変わっていました。
TRAIL HUTというお店の新しい時間が、この空間の中でゆっくり積み重なっていくことを楽しみにしています。